わたしのせかい
彼氏ができた。
出会い系で見つけた気の弱そうな一つ年下の男性。体型はすこしぽっちゃりしてる。

「ミーアさんですか?」
「うん……」
前みたいにうまく笑えなかった。
初対面の同年代の異性。しかもネットで知り合った人だから。
会った場所は、彼が探した居酒屋。
「食べたいのあれば頼んでいいよ」
メニューを渡され目を通す。
とりあえずお酒は梅酒。でも食べたいものはない。好き嫌いはないし、とりあえずお腹が満たされればそれでよし。なにを頼んでいいのかわからない。
「うーん…」
優柔不断にも程があるというほど煮え切らない返事。
それに対して彼は何も言わずに、ただ串盛りや玉子焼きを手早く頼んだ。
お箸も手拭きも取って渡してくれる。
「ありがと」
彼はお喋りな方ではない。わたしも同じ。
けれど、すごく気が利く。
「つきあって」
そういう言葉が自然に出てきた。
「いいよ」
彼は頭をかきながらそう言った。
わたしの初めての彼氏。けれどわたしの初めてはもうないの。


それから毎日メールした。
ショッピングモールで待ち合わせして、彼の家に行った。
「おじゃまします」
小ぢんまりとしたワンルームのアパート。わたしの部屋と間取りは似ている。けれどロフトがついていた。
「ロフトだー!いいなー」
「あはは、夏場はあついよ。だから今では物置になってる」
ロフトの手すりにはジーンズがかかっていて、またその奥にはマンガらしきものがいくつか見える。たしかに物置だ。
「スリッパ使っていいよ」
「大丈夫、平気」
スリッパなんて面倒。冬用のモコモコした可愛いスリッパだ。前の彼女のものかしら。たしかに今は冬だし、すこし足元が冷える気がする。

夕飯はショッピングモールで買ったお弁当。
1人で食べるより2人のほうが美味しい。それに寂しくない。
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