わたしのせかい
会話はそんなにないけれど、居心地はいい。
やっぱり好き。早く彼と一緒になりたい。
ジッと彼を見つめるけれど、会ったのは今日で二回目だしいくらなんでも早すぎる。
わたしは目を逸らした。


そして3度目のデート。場所はやっぱり彼の家。
「寒いね」
夕飯の支度をするために近くのスーパーまで2人で歩く。
手は繋いでいない。繋ぎたいけれど、言い出せない。
「寒いね」
彼の手はポケットに。
息が白い。
夕飯は鍋の予定。なんでもアリの寄せ鍋。
肉、魚、キノコ、豆腐、白菜とか。
鍋の材料になりそうなものを買い物かごにいれる。
「ごぼうは?わたしごぼう好きなの」
「ごぼう…?いいんじゃない?」
なんて会話が楽しい。

帰り道、2人とも一つずつ袋を持って歩く。
一緒にスーパーに行くことがこんなにも楽しいことだなんて思っていなかった。

冬の温かい鍋は体に染みる。
「おいしい」
「やね」
相変わらずわたしたちの会話は少ない。
けれど、心は暖かかった。

鍋の後に芋焼酎を飲んだ。どんな銘柄だったか忘れた。
グラスを片手に、部屋の片隅にあるお泊りセットを見る。今日はお泊り。
彼は黙ってる。私も黙ってる。
お酒を飲んで頭がくらくらする。
時計の針は11時を指している。
「ねえ、シャワー借りていい?」
「うん」
彼は歯切れのよい返事をした。
何を考えているんだろうか。
そんなことを思いながら、風呂場へ向かった。一人暮らしの家の間取りなんてだいたいわかる。
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