わたしのせかい
シャワーの蛇口をひねる。
お湯が出る蛇口と水が出る蛇口がついている。
このタイプの温度調整は難しい。
ちょうどいいと思ったら、シャワーを浴びてる途中に水に変わった。
「つめた…!」
待ってみてもずっと水のまま。
「ねー!お湯出ないよー?」
わたしはどうすればいいか聞きたかっただけで、まさか彼が来るとは思わなかった。
彼が躊躇わずに浴室のドアを開けたから、びっくりした。
当然わたしは裸で、彼のわきをすり抜け浴室を出た。
今まで初対面の男には幾度となく裸を見られてきたのに、自分の感情と行動に驚いた。

「お湯でたよ」
「……ありがと」

恥ずかしくて、彼と目を合わせることなく浴室に戻った。



わたしと交代で彼がシャワーを浴び、ソファーに2人、黙って座っている。
なんとも言えない沈黙。
「……ねえ、したいな」
彼の服を軽く引っ張った。
彼は弾かれたように敷布団を用意した。
ムードがないなあと思いつつ、彼の行動を見ていた。

その日、彼との初めての夜をすごした。

自分から誘って押し倒したようなもので、その時はすごく優越感に浸っていたことを覚えている。
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