この声が枯れるまで
「ちがうって……??」


「感動した。こんなに頑張ってるんだもん。いっぱい練習したって事が伝わった。なんか、すっごく元気付けられた気がする。ありがとう。」


”ありがとう”



音楽って………人に感動を与えることができる。人に、笑顔を届けることが出来る。12歳だったこの頃の俺は、音楽が好きで好きでたまらなかった。純粋に、がむしゃらにギターを弾いて、楽しくて嬉しかった。


「また、聞かせてね。」


長尾はそういうと、手をふって、教室に戻った。俺は、この時、初めて人を泣かせる音楽ができたと思った。


”人に、何かを伝えられるギタリストになれ”


小さい頃、兄ちゃんに、そういわれたことを思い出した。今まさに、その時なのかもしれない。人に、何かを届けられたのかな?長尾の心は、いまどんな気持ちなんだろうな。



「…………なってやるよ」




絶対に、なってやる。人に笑顔を届けられるような、幸せになれるような。そんな曲を作って、歌いたい。兄ちゃん以上に。兄ちゃんを超えて………



「隼人ーー!!」



どこからか、俺を呼ぶ声が聞こえた。たぶん、もう授業がはじまるといったことだろう。俺は、ギターを、ケースにしまって、屋上を後にした。




今日の天気は、晴れだった。




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