音人。
「もう、弾かないのか」
ピアノを習っていたのは壱兄だけではなかった。あたしはもちろん、浩兄も康兄も習っていた。
でも、元来体育会系である浩兄はピアノは3ヶ月も続かなかったそうで、あたしは浩兄がピアノの前に座っているところをまったく見たことがない。
康兄が弾いているのは微妙に見たことはあったような気もするけれども、それでも康兄もあっさり算盤とか公文式の道に進んでしまい、そのあとはパソコンへまっしぐらだったから、それっきりだった。
結局長く続けたのはあたしと壱兄だけだった。
壱兄は基本的に論理的だ。数学が得意なだけあって、かっちりと、本当にかっちりと音楽を組み立てていく。以前1回だけ壱兄の作った音楽を聴いたことがあったけど、すべてがパズルのように積み重なっていた。練習風景の話を聞いても、よくわかる。
「弾かないよ。だって、壱兄のほうがうまいもん」
あたしはそんな簡単な言葉で誤魔化すけど、壱兄のほうがうまいからではなく、あたしは自分のピアノを、自分の音楽を壱兄に聴かれたくないだけ。
ピアノを習っていたのは壱兄だけではなかった。あたしはもちろん、浩兄も康兄も習っていた。
でも、元来体育会系である浩兄はピアノは3ヶ月も続かなかったそうで、あたしは浩兄がピアノの前に座っているところをまったく見たことがない。
康兄が弾いているのは微妙に見たことはあったような気もするけれども、それでも康兄もあっさり算盤とか公文式の道に進んでしまい、そのあとはパソコンへまっしぐらだったから、それっきりだった。
結局長く続けたのはあたしと壱兄だけだった。
壱兄は基本的に論理的だ。数学が得意なだけあって、かっちりと、本当にかっちりと音楽を組み立てていく。以前1回だけ壱兄の作った音楽を聴いたことがあったけど、すべてがパズルのように積み重なっていた。練習風景の話を聞いても、よくわかる。
「弾かないよ。だって、壱兄のほうがうまいもん」
あたしはそんな簡単な言葉で誤魔化すけど、壱兄のほうがうまいからではなく、あたしは自分のピアノを、自分の音楽を壱兄に聴かれたくないだけ。