〜夢叶〜
7時35分

私は家で化粧したり
巻いたりして駅前に
来てえみを待っている

遅いなー、なにしてん
だろ

そう思ってるうちに
逆毛を立てたアップスタイル、
蛍光色のホットパンツが
よく黒肌に映えている
えみが申し訳なさそう
に走ってきた

「ゆり、ごめーん
盛るのに時間かけすぎ
たぁ」
「もぅ、それならメール
してよね」
「はぁい、って!
ゆりヒール?!」
「うん」
「クラブは踊るとこだ
よ、ヒールNGぃ」
「そんなん知らないか
ら」
「ま、いいや。8時か
らopenだから急ご!」

人込みの中を
手を繋いで走っていく
しつこいキャッチを振り切り
クラブ ディーバに着いた

「ここだよ」
「地下なんだね」
「うん、サーメンのみんな
来てるかな」

落書きだらけの階段を
降りていくと
かなりの大音量でサイケが
漏れていた

「うるさくない?」
「まだまだ」

入口の前にいるStaff
という名札を付けた
短髪で黒肌の20代後半
の男がえみをみるなり
「えみじゃね?!」
「ぁー!たかさん」
「久しぶり!もう
始まってるよ」
「はーい」
「その娘は?」
「ゆり、うちの親友」
「へぇ」
「じゃあ、また後で!
行こ、ゆり」

入ると 満員で
泥酔してるのか
しらない人同士キスした
り抱き合ったり
ある人は狂ったように
踊っていたり
メルアド交換してたり
爆音の暗闇のなか
異様だった

「えみー!」
マンバ集団が抱き着いて
いる、見た目は大人
っぽいけど声が幼い。
「りぃたんたちも
踊りにきたんだぁ」
「うん、てかミーツこいよ」
「ごめーん、来週から
行くからさ」
「代表達の引退イベの
パンフに使うピンプリも
用意してて」
「りょーかい」
「んじゃーねぇ」

「えみって顔見知り
多いね」
「センターにたまってる人
は9割、知り合い」
「すごっ」
「ねー、早く踊ろ」
えみがサイケに身を委ね
踊っている
私は慣れない踊りを
覚えようとしていた
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