溺れる唇


ここはシステム管理部。

こんな時間にかかってくる電話なんて、
トラブルに決まってる。


私は壁に掛けられた味気ない時計に
目をやった。


PM 8:58


9時には帰ろうと思っていたのに。


もうとっくに退社時間を過ぎている。

かかってくる電話を無視しても、
上司の笠井はきっと咎めない。

けれど、こんなにも鳴り響く電話を
取らずに帰るには、私は少しばかり
お人よし過ぎた。


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