溺れる唇

誰かがかけてあげたらしい、
体から落ちそうなタオルケットには、
私の書いた用紙が貼られていた。

『予約席』に大きな×が付けられ、
その横に『使用中』の文字。


そんなことは、見ればわかるし、
寝ている本人に貼るなんて、
明らかな悪戯。


藤原さんあたりの仕業だろう。

芳賀くんや村田さんは、
さすがにこういうことはしない。

「よくあの格好で入れましたよね」

芳賀くんが指差すソファの足元には、
脱ぎ捨てられた茶色の革サンダル。



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