溺れる唇

「芳賀くん、上司のああいう所は
真似しちゃダメよ」
「わかってます」

芳賀くんは困ったように苦笑した。

「僕には、真似できませんし」

すると、いつの間にか背後にいた
藤原さんが笑った。

「あんなことが許されるのは、
あの人だけだろ。ロビーで誰か、
おっかないのに会ったら、説教もんだ」

俺だってできない、と、藤原さんは、
中央のミーティングテーブルを指す。

「よし、じゃあ、凡人の俺らは来週の
打ち合わせだ」



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