溺れる唇
「あ、翔子さん!」
赤くなる頬を押さえていたところに
声をかけられ、顔を上げる。
「あ」
ちょうどトイレに入って来たのは、
以前、システム管理部にいた女の子。
榎本あゆみちゃんだった。
「お久しぶりです~」
私が移動した翌年にやって来た彼女は、
なかなか優秀なアシスタントだった。
上の意向で、2年もせずに移動して
行ってしまったけれど。
「久しぶり」
「本当に久しぶりですよね。同じ会社
なのに、びっくりするくらい会わないし」