溺れる唇

「卒業式には?」
「いなかった。でも、あっちとは
入学と卒業の時期がズレてるから」
「あ、そうでしたね」
「留学先の大学で、単位を取って
卒業したんじゃないかな」
「ふうん」

あゆみちゃんは感心したように頷く。

彼女の中のデキる男ポイントは、
確実に上がったようだ。

それはつまり、彼女の個人的興味が
失われているのと同義なのだけれど。

「留学したから、あんなに身長が
伸びたんですかね?食べ物??」

こんがり焼けたホッケの開きをつまみ
ながら、ひとり言のように呟く。

新潟の米どころで育ったせいなのか、
あゆみちゃんは洋食や中華よりも
和食に馴染みがあるらしい。



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