溺れる唇
「いいわよ」
そこへ鳴りだす、内線の呼び出し音。
「あ、僕が」
電話を取った芳賀くんは、微笑みながら
いくつか質問をして、受話器を置いた。
「経理で1台、サーバにアクセスできない
みたいなので、行って見てきますね」
「そう。お願いね」
芳賀くんには悪いけど、今日は
『私が行くからいいわよ』
なんて言える状態じゃない。
それに、こういう小さな積み重ねが、
芳賀くんの勉強にもなる。
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