溺れる唇

「飲めないなら断れよ」

そう言った顔は、今考えれば、珍しく
真面目で、珍しく口調もキツめだった。

「すみません」

私はそう言ったと思う。


もしかしたら、

「すみゃ-へん」

みたいな、呂律の回ってないような
発音だったかもしれないけど。


多分、大人で上司の笠井さんからすれば、
真っ赤な顔してヘロヘロになってる私は、
おバカな部下の1人だったんだろう。

どんな部署にでも、たまにいる感じの。



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