溺れる唇

笠井さんがそう言って、油たっぷりの
炒め物を想像してしまった私は、
思わず顔をしかめた。

「・・・私が二日酔いだって
知ってますよね?」

ハハッ、と笑って、笠井さんはパソコンの
横に積まれた書類の一番上を取り上げ、
最初のページをめくった。

「ここの裏入ったとこの店あるだろ?」
「はい。いつもの大盛ランチの店ですね」

何度か連れられて行ったことのある
中華屋さんのことだ。

安くて美味しい、そしてボリューム満点の
ランチが食べられる店。



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