溺れる唇

どうしてそんなことを言うのか、
よくわからないけれど。



「とりあえず、今は、さ」



よくわらない上司の言葉を、頑として
断るだけの理由が、私にはなかった。


「はぁ・・・・まあ・・・はい」


気の抜けた返事をする私にチラリと
視線を送って、笠井さんはまた、
ふっ、と苦笑すると、仕事に戻った。



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