溺れる唇
電話の声が言った通り、
その部屋は3階の突き当たり。
エレベーターを降りてくれば、
営業課のドアを2つ通り過ぎた所にあった。
コンコン。
パーテーション越しに光の漏れるドアを
軽くノックする。
「失礼します。システムです」
名乗りつつドアを開いた私は、
立ち上がった人物を見るなり、
フリーズしてしまった。
少し日焼けした肌の背の高い男。
茶色がかった髪は、記憶にあるよりも
やや短くなっていたけれど。
「翔子?!」
間違いない。
彼は、私の忘れられない男、だ。