溺れる唇

「翔子先輩・・・」
「ふふ、やっぱり痛かった?」

ごめん、と謝ろうとした指先を、
芳賀くんが強い力で掴む。

ぐっ、と、そのまま手を引かれ、私は
体勢を崩した。

「どうして・・・」

大きな目の縁で、長い睫毛が揺れる。

それをキレイだと、見とれる時間もなく、
芳賀くんは泣きそうに顔を歪めた。

「どうして、あなたはそうなんだ」



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