溺れる唇

膝をついてしまった私を、芳賀くんが
見下ろす。

「ごめんなさ」

私が思ってた以上に痛かったのかも。

謝りかけた私の頬を、芳賀くんの指先を
掴んでない方の手が包んだ。


「僕だって、男なんですよ?」


いつも同じくらいで交わしている視線の
高さが変わっただけなのに。

私はなんだか落ち着かない気分で、
芳賀くんの言葉を反芻する。



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