溺れる唇
とにかく、芳賀くんの掌はノックの音で、
反射的にか、離れていたから。
なんだか後ろめたい気持ちを振り切り、
私はパッと体を起こすと、
ドアに向かった。
「はい。今、開けます!」
声をかけてドアノブを引くと、
ずいっと背の高い男が割り込むように
入って来る。
「おつかれ、翔子」
白い歯を見せて笑った、高い位置に
ある顔を見上げて、私は強ばっていた
体から驚きが抜けていくのを感じた。
「裕馬・・・」