溺れる唇

「キスした後に、
そんな顔されるなんて初めてですよ」

茫然と見つめる私を見て、
悲しげに伏せられる長い睫毛。

「一目惚れも、こんなに長い片想いも。
翔子さんと会ってから、僕は・・・」

芳賀くんは、自嘲気味に唇を歪ませて、
小さく笑った。

「好きなんです」

小走りに近寄って来た誰かが、
数歩手前で止まった。

「僕はあなたが好きなんだ」


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