溺れる唇

何も言えない私を見つめる芳賀くんの、
真剣な目。

「・・・あ・・・」

乾いた喉から声を絞りだそうとした私は、
横からぐっと、
張り付いていた視線を剥がすように
肩を引かれる。

私に向けられていた芳賀くんの視線が、
斜め上へと逸れる。

その視線に、
明らかな敵意が浮かんだのが、
鈍い私にも、はっきりとわかった。

「何しに来たんですか」


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