溺れる唇

「なんなの?
こんな所に引っ張って来て・・・」

息を弾ませ、ヨロヨロと
階段の手すりにつかまった私の、
背中に回される腕。

「ちょっ」

身の危険を察知した私を
抑え込むようにして、
大きな体が覆いかぶさって来る。

「う・・・んっ・・・」

喰らいつくように塞がれた唇。

懐かしい唇が触れたところから、
生まれてくるのは、
抗うことのできない、あの感覚。

あまりにも甘美なその触感に、
奮い立たせようとした理性も
あっけなく崩れ去る。


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