溺れる唇

欲しくて仕方のなかった唇を、
拒むことなど、
考えられるはずもなくて。

抵抗らしい抵抗もできないまま、
私は待ち望んでいた
キスの快楽に溺れていく。

触れて、なぞって、追いかけて。

そして、やわらかく唇を割り開いた舌が
強張った私のそれに触れると、
甘い痺れが奔流となって
全身を駆け巡った。


誰とでも味わえるわけではない、
とろけるような感覚が
私の頭と体を弛緩させる。


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