溺れる唇

「沢田?」

出来る限りの注意を払ったつもり
だったけれど、ドアを開けたことは
すぐに気づかれてしまったらしい。

カウンターの端から顔を覗かせた
笠井さんは、
開きかけたドアと私を見て、
優しい苦笑を浮かべた。

「・・・俺は構わないけど・・・」

目線で促されて、自分の体を見下ろす。

「いいのか?
そんなカッコで出て来て・・・」


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