溺れる唇

下を向くと、床の上で、手入れした
ピンク色の足の爪がピカピカ光った。

Tシャツの下には、新品の下着。

今は見えないサーモンピンクが、
私の脳裏にはくっきりと映っていた。

「笠井さん・・・」


ごめんなさい。


口から出かけた言葉を飲み込んだ私は、
代わりの言葉を探して爪先を見つめる。


こんな時の、こんな気持ちは、
どんな言葉に変換したらいいんだろう?


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