溺れる唇

流されそうな感覚に身をすくめる
私の耳たぶを、やわやわと食み、
笠井さんは微かな吐息を漏らすと、
ちゅっとかわいらしい音を立てて、
唇を離した。


「俺のベッドのレンタル代は、これで」

クラクラするような色っぽい声で
低く囁いて、
笠井さんはスルリと私を解放する。


「・・・コーヒー、淹れておくよ」

再び閉められたドアに手をつき、
私はのぼせそうになった額を預けて
囁いた。


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