溺れる唇
入ったばかりの頃は仕事を覚えるので、
それどころじゃなかったし。
覚えてからは、仕事に追われて
それどころじゃなかった。
大体、男でも女でも、新入社員になんて
興味はないんだ。
「いや、でも、知ってたら、今日は
来てくれなかったかもしれないよな」
「え?」
「そう考えると、翔子が知らなくて
良かったかも」
爽やかに笑われて、かあっと顔が
熱くなる。
それって・・・会えて良かったってこと?
「でも、俺は知っておきたかったな。
去年からいるのに1度も見かけなかった」