溺れる唇

「あ、そこで止めて下さい」

PM 1:21

会社の少し手前でタクシーを降りる私は、
パンツにシャツのきちんと系。

休みを許可されたとは言っても、
会社の近くまで行くのだ。

あまり浮かれた恰好ではマズイだろう、と
思っての慎重派なファッション。

そもそも、代休申請が当日の手続きで
認められるとは思えない。


ああ、でも、と。

油じみた赤い暖簾をくぐりながら、
私は軽いため息をつく。


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