溺れる唇

あの人のことだ。

私が知らない間に、
うまいことやってくれた可能性は大だ。

「お疲れ様です」
「お疲れ」

お座敷で待っていた笠井さんは、
いつもの笑顔。

今朝のことなんか、
何でもなかったっていう感じの、
いつもと同じ笠井さんだった。

「なんだ?不機嫌そうだな」
「そんなんじゃないです」

ドキドキして、モヤモヤして、
泣いたりした私がバカみたいだ。


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