溺れる唇

おそらく、時間にすれば、ほんの数秒。

早足の長い足は小さな路地を歩ききり、
呼び止めることもできない内に、
去って行く。



昨日も、
それに、甘酸っぱい思い出の中でも、
背を向けるのは、いつも私の方。


こんな気持ちで、
裕馬の背中を見つめたことなんてない。



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