溺れる唇

「・・・きっと?」

すがるように繰り返すと、
笠井さんは優しく苦笑して、
瞬きの拍子に落ちた涙を指先で拭った。

「重要事項は必ず本人に確認しろって、
いつも言ってるだろ?」

優しく笑う瞳のままで、
真面目くさった声を出し、
笠井さんはふう、と
大きなため息をついた。



「・・・・・行ってくれよ」



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