溺れる唇

笠井さんの声に、
今朝のコーヒーのような苦みが滲み、
迷子になったような不安にかられた。


優しい、人。

けれど、その心地よい腕の中を
選ばなかった私は、今、ここから
踏み出さなければいけないのだ。


「・・・・・はい・・・」



歩き出さなきゃいけない。



ちゃんと、足元を確認して。


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