溺れる唇

学生時代、ふいに姿が見えなくなると
友人達は言っていたけれど。


私は、知っていた。


彼は、ひっそりとした場所に
『彼の指定席』みたいなものを
持っていて。

あまり人目につかない
その場所にいると、
落ち着くことができるのだ。


日当たりの悪い、
非常階段の4階の踊場。

講義棟の廊下の突き当たり。


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