溺れる唇

裕馬が教えてくれた場所を
思い出しながら、
開きかけた自動ドアの間に
滑り込む。

脇目も振らずにロビーを横切り、
目的地にたどり着くと、
私は、目的のモノを見つけ、
弾む息を整えながら、つぶやいた。


「やっぱり・・・ここにいた・・」


自動販売機に向かいあう形で
大きめのベンチ。

この間と同じように下を向いていた
裕馬は、私の声にゆっくりと
頭を上げた。


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