溺れる唇
のんびりとした休日の昼を楽しみ、
あゆみちゃんと別れた私は、
暑さも落ち着いて来た
夕方の道を歩き出す。
足元には、久しぶりに
箱から出したハイヒール。
視界と一緒に少しだけ上がった
気分で駅前の広場にさしかかった私は、
噴水の前に佇む背の高い姿を見つけて
足を速めた。
「翔子」
ヒールの足音に気付いた裕馬が、
屈託のない笑顔を私に向ける。
あと少しの距離を一気に縮めて、
胸に飛び込むと、ちゅっと
ついばむようなキスをして。