溺れる唇
「ヤキモチってこと?」
「そう」
なぜか拗ねたように言う、裕馬。
「うーん」
首をかしげる私のそばにやって来て、
裕馬は更に言う。
「例えばさ、俺が美人上司と一緒に」
「うちの会社に美人上司なんていた?」
「いや、いないけどさ。例えば、だよ。
例えば」
私は沸騰を知らせる電気ケトルを
取り上げ、くすくす笑って繰り返す。
「わかったわ。例えば、ね。例えば」
ムッとしたような顔で、それでも、
話を続ける裕馬。
「例えば、俺が美人上司と2人っきり
だったら、どう?」
「どうって・・・上司なのよね?
そういうこともあるんじゃない?」