溺れる唇

ぷぷっと吹き出し、私は2つ並べた
カップにお湯を注ぐ。

セットしたドリップオンのコーヒーから
ふくよかな香りが立ち上る。

普段は缶コーヒーやインスタントに
なってしまうことが多いけど、
やっぱりコーヒーはこうして
淹れたものの方がずっと美味しい。


コーヒーメーカーを買ってもいいかな。

裕馬は紅茶、あんまり好きじゃないし。


コーヒーだけでもいいけれど、何か
つまめるものがあったかも。

棚下のカゴを探ってみると、
買い置きしてたお菓子の袋が出て来た。

「あった♪ねえ、裕馬。
クッキー、食べるでしょ?」

見上げると、裕馬は眉間にシワを寄せ、
とても不機嫌そうな顔で、シンクに
腰を預けていた。


< 314 / 344 >

この作品をシェア

pagetop