溺れる唇
ぷぷっと吹き出し、私は2つ並べた
カップにお湯を注ぐ。
セットしたドリップオンのコーヒーから
ふくよかな香りが立ち上る。
普段は缶コーヒーやインスタントに
なってしまうことが多いけど、
やっぱりコーヒーはこうして
淹れたものの方がずっと美味しい。
コーヒーメーカーを買ってもいいかな。
裕馬は紅茶、あんまり好きじゃないし。
コーヒーだけでもいいけれど、何か
つまめるものがあったかも。
棚下のカゴを探ってみると、
買い置きしてたお菓子の袋が出て来た。
「あった♪ねえ、裕馬。
クッキー、食べるでしょ?」
見上げると、裕馬は眉間にシワを寄せ、
とても不機嫌そうな顔で、シンクに
腰を預けていた。