溺れる唇

「なんか、翔子は俺なんか、
大して好きじゃないんじゃないか・・
って気がして来た」
「なに言い出すのよ、急に」

また私が笑うと、
裕馬は強めの口調で言い返す。

「だって、翔子、俺の話ほとんど
聞いてなかっただろ?
クッキーとか選んだりしてさ・・・」

まったく、めんどくさい男だ。

私はそんなことよりも、
さっさとソファに移動して、
2人で熱いコーヒーを楽しみたいのに。

だけど、しょうがない。

「ちゃんと聞いてたわよ」

どうにもこれは、裕馬にとって、
すごく大事なことらしいから、
私は裕馬のために、ちょっとだけ
そんな場面を想像してみる。


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