溺れる唇

今の状況が悪いわけではないけれど。

同性だからこその良さもある。

「でもね、そこに芳賀くんが入って来て
・・・そのことを口に出すのは
やめようって思ったの」

不機嫌そうな裕馬の眉がぴくりと動く。

「アイツが入って来て、また男だって
ガッカリしたんじゃないのか?」
「うーん・・・まあ、最初はね」

裕馬の眉の間のシワが少しだけ緩んだ。

「でも、芳賀くんは何に対しても
一生懸命で・・・新鮮だった。
部内の空気も変わったわ」
「まあ・・・若いし、な」

裕馬は、おもしろくもなさそうに言う。

「ジャニーズ系美少年だって、
社内ではかなりの人気なんだってさ」


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