溺れる唇
別々の時間を過ごして来た私達が、
こうして唇を重ねていられるのは
いくつもの偶然のおかげ。
あの時、
私が電話を無視し続けていたら。
残業せずにすむ部署にいたなら。
もしくは、同じように再会しても
どちらかに、恋人や夫、
もしくは、妻がいたなら。
私達は、久しぶり、などと、
ごく簡単に言葉を交わすだけで、
きっと、触れ合うことなどなかった。
そして、その久しぶりの再会も、
忘れられないキスの思い出と共に、
そっと心の奥にしまったことだろう。
私は・・・多分、裕馬も。