溺れる唇
そう考えると、
せつない気持ちになるのは確か。
だけど、仕方ない。
それは、あの時、傷つけられた、と
ささいなことで別れを選んだ
幼い私の過ちのせい。
だから、私は自分自身に誓うのだ。
もう二度と、不確かなことで
疑ったりはしないこと。
それから、やっと手に入れた
この唇を、この人を、
もう放したりはしない、ことを。
「ねえ、裕馬」
そっと交わしていた唇を離し、
私は彼の首に腕を回して言う。
「芳賀くん相手にヤキモチなんか
妬いたりしないで」