溺れる唇

駅前の待ち合わせ場所に着くと、
見間違えようもない姿が
俺の視界に飛び込んで来た。

待ち合わせたのは、沢田翔子。

長年想い続けた、俺の恋人。


薄いグレーのニットに膝のあたりで
揺れる無地のフレアスカート。

靴もバッグもシンプルなデザインで、
すっきりとしたボブの黒髪が
印象的な翔子によく似合っている。

会社でよく見かけるシャープな
スーツやシャツ、タイトスカートも
いいけれど、休日の少し柔らかい感じの
する翔子の方が俺は好きだ。

ただ好みなだけかもしれないが、
殻を脱いだ素の姿を見せてくれている
気がして嬉しい。

ああ、もちろん、実際に服を脱いだ
翔子なら、もっと好みだ。


< 333 / 344 >

この作品をシェア

pagetop