溺れる唇
「今夜は社内サーバを緊急メンテナンス
する予定なの。夕方、大きなトラブルが
あって・・・営業企画の入っている
ブロックではないけど、そろそろ作業が
始まるところだったから。」
急かした理由を説明するフリをして、
自分に感じた一抹の寂しさを誤魔化す。
大人になると、こんなすり替えばかりが
うまくなっていくのだ。
もう、痛みを感じても、素直に泣ける
ような年でもないから。
「明日、うまくいくといいわね。
じゃ、お疲れさま」
分解したPCをまとめて道具をしまうと、
「きゃ!」
肩にかけたバッグを掴まれた。