溺れる唇
“メンテ完了メール送信済。
帰って寝るんで、よろしく。
かさい”
徹夜作業で疲れていたのだろう。
“かさい”の3文字は、特に間延びして
歪んだ形になっていた。
まるで、あくびをしているみたいだ。
気の抜けた上司のメモに笑っていると、
ドアの向こう側から声が聞こえて来た。
「おはようございまーす」
「おはよう」
同僚と言っても、ここには笠井の他に
私も含めた数名だけの小さな部署だ。
最後に入って来た主任の藤原さんが、
ボードに目を止めた。
「お、無事に終わったんだな」