溺れる唇
昨夜、私は裕馬の誘いに乗らなかった。
”お礼”だからなのか、
”久しぶり”だからなのか、
わからないけど。
裕馬は断っても簡単には引き下がらず、
あれは冗談だから、と言った
私のバッグを離さない。
そして、あろうことか、立ち上がって
間合いを詰めてきた。
身長差があるから、顔の位置は遠いが、
なんとなく気圧される。
「いや、でも本当に助かったし。
夕飯、まだだろ?」
それは・・・・・まあ、そうだけど。
「でも、ほら、こんな時間だし。
今日はもう帰って、寝るわ」