溺れる唇

「夕飯、抜きで?」
「う、うん」

裕馬の顔には

『翔子が夕飯抜き?!』

と書いてある。


失礼な。



「美容に良くないし」

「疲れてるし」


ダメ押しのように付け足すと、
裕馬はようやくバッグを離した。

「それもそうだな・・・ごめん」
「う、うん。こちらこそ」

そそくさと立ち去る私に、裕馬は
もう一度、満開の笑顔を見せた。

「翔子。今日は本当にありがとう」



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