溺れる唇
「先輩、疲れてるんじゃないですか?
昨日も遅かったみたいですし・・・
あまり無理しないで下さいね」
ああ、ごめんね。
芳賀くん、キミはなんてイイ子なの?!
私はもう、情けなさに涙ぐみそうだ。
いたいけな瞳を直視できずにいると、
「先輩?」
と、芳賀くんは、子犬のような表情で、
私の顔を覗きこんで来た。
ああ、もう、なぜ?
なぜ、こんな私を、この子の
教育係にしたんですか?!
私は、間の抜けた声を思い出しながら、
上司の笠井を恨んだ。