溺れる唇

芳賀くんは、イイ子だ。

ダメな大人の私を、こうして、
先輩、先輩、と慕ってくれる。

だからこそ、私は時々、
いたたまれまくなるのだ。


昔、裕馬の笑顔を見ていた時に感じた
ような、締め付けられる胸の痛みを
感じることもある。

もちろん、それは恋とは違うんだけど。


私にだって、こんな純粋な目をしてた
頃がある・・・んだろうか?


そんな想いだ。


でも、いつだったか、友人のエミコが
言ってくれた。


どんな悪党にだって、純真無垢だった
子供時代はあるんだよ、と。


いつだったか、全く思い出せないだけで。


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