溺れる唇

「データ移行は無事終了しました。
ついでにパーツも足しておいたので、
前より処理速度も上がるかと思います」

「あー、助かる!なんか遅くなったと
思ってたんだ!」

明らかに年下だとわかったのか、裕馬の
言葉は気安い。

「本来なら、こちらからお伺いする
所ですが、設定等は済んでますので、
お持ち帰りいただいても構いませんよ」

にこにこにっこり。


愛想の良い笑顔で、丁寧な対応。

デキる後輩の成長は、さして優秀では
ない教育係にとっても嬉しいものだ。


温かい気持ちで見守っていると、
藤原さんが笑いを堪え切れない、と
いった顔でこっちを見た。


え?何か今、ウケるポイントあった?



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