溺れる唇

私は財布を持つと立ち上がった。

おごる、と言われても。

今ここで、手ぶらでいくのイヤだった。

なんだか、裕馬の思い通りに
踊らされてるみたいで。

「お騒がせして、すみませんでした」

軽く、3人に向かって頭を下げる。

藤原さんは笑ってて、村田さんは普通。

芳賀くんは笑顔がキラキラしてなかった。



私の代わりに対処してくれたのに・・・

ごめんね。



段ボール箱に入った捨て犬を見た時の
ように、胸がきゅうっと痛む。


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